立ち読み 「まえがき」と「あとがき

 まえがき

  「生命・生活・いのち」― 毎年、この三つの言葉を黒板に書くことから、私の講義を始めることにしている。生命操作する先端技術が激しい速度で進む現代では、生命哲学の問いかけがますます必要となってくる。一人ひとりが、生きることに対して多くの方面から問いかけがなされている。
 私たちが直面する諸問題と取り組むためには、科学の知識と技術の助けが欠かせないのだが、それだけで済むわけではない。「生命」を探求する自然科学と「生活」を対象とする社会科学の他に、「いのち」を問う哲学が必要である。
 バイオで始まる言葉が流行るこの頃であるが、バイオフィロソフィー、すなわち生命哲学への提言を本書ではしてみたい。そして、そのために理系と人文系の間の橋渡しが求められるのは言うまでもなく、専門家と一般市民の間にも橋渡しをしなければならないであろう。
 本書に集めた諸論は専門家の方にとっては簡単すぎるかもしれないが、そうかといって一般向けになっているのでもない。そういった「橋渡し」のためのささやかな貢献ができれば著者として幸いである。

ホアン・マシア


 あとがき

 本書に掲載した諸論は、ここ数年間それぞれの専門誌で著したものであるが、ここでその出典を記しておこう。
 第1章は、『上智大学生命科学研究所紀要』20号(2001年)および同紀要21号に掲載された論文を合わせてできたものである。
 第2章は、2000年7月2日、臓器移植に関するシンポジウムが上智大学で行われた際の私の発題から出発して、前述の『生命科学研究所紀要』19号に掲載されたものも使っている。
 第3章は、2002年7月に上智大学で行われたシンポジウムでの発表加筆したものである。
 第4章は、2002年6月30日に上智大学で行われた、生命の始まりに関するシンポジウムでの発言がその発端である。
 第5章は、「QOLへの疑問とQOL判断の基準」、『作業医療ジャーナル』誌、vol.26(1992年)に発表したものである。
 第6章は、『エマージャンシーナーシング』誌1992年12月号に掲載されたものである。
 第7章は、『法の倫理』誌、18号(1999年)に掲載された。
 第8章は、『上智大学生命科学研究所紀要』17号(1999年)に掲載された。
 第9章は、『カトリック研究』67号(1998年)に掲載されたものである。収録あたり一部割愛した。
 第10章は、カトリック中央協議会での司教総会の際に行った講演が基となっている。

 元の論文とは違って、今回はすべての章は、疑問形のタイトルを持っている。それは哲学の立場から科学技術に対して疑問を出したかったからである。
 なお、神学関係の内容を取り上げる10章においても疑問形を用いた。科学に対してだけでなく、宗教と神学に対しても哲学者が疑問を投げかけるのである。その章の内容は、神学の外部から見れば異質なものと映るであろうが、内部の者が読んだ時はあるいは大胆すぎると思ってしまうかもしれない。
 というのは、著者にとって神学の立場は、単なる公文書のオウム返しではなく、その批判的な受け止め方も含むからである。

ホアン・マシア


戻る