| 『キリスト教の原点』 書評 |
忠実で、親切な本
百瀬師による最新のキリスト教解説書。まさに、キリスト教の原点である「イエス・キリスト」の人格と思想をテーマにした探究の旅が始まろうとしている。忠実であり、親切な本である。つまり、イエスと出会って神の慈しみ深さを実感した弟子たちの気持ちに誠実にさかのぼろうとする努力が全編を貫いており、しかも初心者にも理解しやすいように随所に基本的な用語の新鮮な解説も織り込まれている。
今、この自分の生活の場でイエスと出会うために、私にとって「イエスとは誰であるのか」を信仰のまなざしで眺めようとする姿勢は、生ける主と共に歩む喜びを確かに与えてくれる。教会の歴史的発展の跡をたどることになる続編にも期待したい。(編集部)
(『カトリック生活』2004年6月号)
高いレベルの内容を維持しながらも、平易な言葉で分かりやすく展開する力技は秀逸
イエズス会司祭の百瀬文晃師が新たに世に送り出したキリスト教解説書。キリスト教の「原点であるイエス・キリストの人格と思想に立ち戻る」(九頁)ことを目指している。信仰者として誠実にキリスト教の中心を理解しようと努力を重ねた百瀬師の二十年以上にもわたる探究の成果が歴史批判的方法を用いながら客観的に語られている。――第一部は「イエスの宣教活動と周辺世界」、第二部は「イエスの思想の独自性」、第三部は「イエスの受難と死」、第四部は「『イエスの復活』への信仰」である。
まさに、本書はイエス当時の世界観を歴史的な研究を通して明らかにしていく。現代人の生活感覚に響くような親切な用語説明も随所に盛り込まれている。信仰に基づいて記された福音書の記述の背後に潜んでいる歴史の事実を浮かびあがらせる百瀬師の手腕は実に鮮やかである。本書を読むことで、当時の人々の「生活の座」を理解し、自分の生活の場にも結び合わせていくことができる。
百瀬師の本は、まるで美しい雪の結晶みたいに構造的に見事に構成されている。――じっくりと考え抜かれた思想が読者の心におのずと染みとおるように当意即妙なまでに的確に表現されており、論旨に一切の乱れがない。しかも神学や諸科学の最新の成果をバランスよく盛り込んでおり、高いレベルの内容を維持しながらも、平易な言葉で分かりやすく展開する力技は秀逸である。キリスト者の信仰理解を深める学習書であると同時に、キリスト教に興味を抱く方々にも有意義な一冊である。
もともと本書の内容は、上智大学神学部の講義「キリスト教概説」で語られたものだった。つまり、本書は前期に学生向けに行われた講義内容に基づいて新たに執筆された書き下ろし作品である。続編(キリスト教の本質と展開)は年内に発行の予定である。講義「キリスト教概説」後期の内容に基づく続編は、今までにない斬新なキリスト教解説書であり、今から大いに刊行が待たれる。(編集部)
(『福音宣教』2004年6月号)