| 『キリスト教の本質と展開』 書評 |
キリスト教を学ぼうとする人にとって必携の書
キリスト教の歴史をたどりながら、現代のキリスト教の諸相を学べるように工夫されている。教会用語は割と難しいが、言語の観点、神学の側面から分かりやすい解説が施されるとともに、キリスト教の成立と発展、中世の光と陰、現代のアイデンティティなど、キリスト教を学ぼうとする方々には必携の書。
各章ごとに「要点」の形で質問事項もあり、復習も容易。T巻が既刊されているので、併用されることをお薦めしたい。
(『家庭の友』2004年11月号)
繊細な感覚を備えている日本人には、まことに適した切り口
イエスに魅せられて、その後に倣う人びとがいる。だから、いのちを捧げ尽くすほど激しい神の慈しみのメッセージは受けつがれ、着実に次の世代にも伝わる。その尊い二千年の歩みを、百瀬師が心をこめて活写している。見事。
現在、キリスト教を信じる者の総数は、世界人口の四〇パーセントを占めている。そして、言うまでもなく、欧米文化の成立背景にはキリスト教的な世界観が息づいている。それならば、どの日本人もキリスト教を無視することは、よもやできまい。健全な国際交流を推進するためにも欧米の精神基盤としてのキリスト教を理解することが欠かせないはずだ。その際、本書の役割は大きい。
ところで、最近の青少年は十字架のペンダントやロザリオを胸に下げており、お気に入りの洒落たアクセサリーにしている。しかし、今どきの若者のふるまいも、それほど突飛なものではなかろう。なぜなら、ファッションとしてのキリスト教という視点は過去の日本にも存在していたからだ。たとえば、茶会用の庭に古田織部が十字架を模したハイカラなデザインの石灯籠を置いたことが思い浮かぶ。ともかく、今こそ、キリスト教の本質を見つめておく必要もあるだろうし、歴史の流れのなかでの影響力の深まりを理解することも急務だろう。
百瀬師は、新約聖書を丹念に読み解きながら、イエスの後継者たちの信仰の歩みを私たちにも追体験させてくれる。そのうえ、絵画・音楽・文学・建築を例に用いながら、キリスト教の影響力を、まざまざと示してくれる。西欧芸術に憧れやすく、美しいものに共鳴しやすい繊細な感覚を備えている日本人には、まことに適した切り口であるだろう。百瀬師は、まるで熟達した旅先案内人。
第一部では、古代から近代までの「キリスト教の成立と発展」を八章にわたって描く。第二部は「現代のキリスト教」と題され、三章構成でキリスト者の人生の意味(アイデンティティー・生活習慣・希望)を明らかにしている。
いささかシンプルにまとめると、キリスト教の本質は「イエスによって実現した神の愛」。そして、キリスト教の展開は「神の愛を広め・深めるための飽くなき努力の歩み」である。今こそ、本書を携えて信仰の旅に出ようではないか。(阿部 仲麻呂 日本カトリック神学会評議員・サレジオ修道会司祭)
(『福音宣教』2004年11月号)