立ち読み

はしがき

  キリスト教とは何か。人類の歴史にどのような影響を及ぼしてきたか。現代世界にどのような役割を果たしているか。この問いに答えることが、本書のねらいである。

  キリスト教を学ぶ上で基礎となるものは、創始者であるイエス・キリストの人格と思想である。イエス・キリストがどのような人物であり、どのように生き、どのような教えを述べたのか、これを史実に則して客観的に学んだとき、初めてこれに基づいて歴史の中で展開されたキリスト教という現象を正しく理解することができるようになる。私たちが前編『キリスト教の原点』でもっぱらイエスの人格と思想の研究に取りくんだのは、その理由による。

  後編では、イエス・キリストの弟子たちがどのようにその信仰に基づいて「教会」と呼ばれる共同体を形成したか、また教会がどのように異なる民族と時代の中でその信仰を表現し、どのように発展して今日に至ったかを学ぼう。ここでも私たちは歴史的な研究方法によって、教会がそれぞれの政治的・社会的・文化的状況の中で発展させた組織、教義、慣習などを学び、イエス・キリストへの信仰がそれぞれの時代と民族の精神性によって受容され、表現され、生きられてきた過程を確かめた上で、さらに、それらが現代世界においてどのような意義をもつのかを考えることにしたい。


あとがき 

  この本は、 先に刊行された『キリスト教の原点――キリスト教概説T』の後編である。前編と同様に、キリスト教のことを学ぼうとする大学生を対象にしているが、後編では主としてキリスト教の歴史をたどりながら、現代のキリスト教の諸相を学べるように、できるかぎり客観的でバランスの取れた提示に努めた。すでに前編は、大学の外でも社会人の勉強会などでテキストとして使っていただいていると聞いて、光栄の至りである。

  大学でのクラスや勉強会に使っていただくために、前編は前期を、後編は後期を想定し、週ごとに一章の内容を割りあてている。とくに後編は、キリスト教の教養的知識を網羅しようとしたために、各章の主題があまりに広範囲にわたって、総花的になってしまったが、その中から興味と関心に応じて好みのテーマを重心的に取りあげて、肉づけしていただければさいわいである。

  なお、歴史の取り扱い方は思想的立場によって異なるのが当然だが、ここでは総じて上智大学中世思想研究所編『キリスト教史』全十一巻(平凡社)の立場を踏襲した。とくに近代以降の教会の発展や、現代のキリスト者の生活と慣習に関しては、カトリック教会の立場が前面に出されるため、プロテスタントの読者にはいささか偏りが感じられるかもしれない。これについては、ぜひ識者のご批判をあおぎたい。また、キリスト教の歴史、文化、慣習などの知識を補充するためには、『岩波キリスト教辞典』(岩波書店)の併用をお勧めしたい。

  最後に、この『キリスト教概説』の執筆をさまざまな形で助けてくれた友人たちに心からの謝意を表したい。キリスト教を学ぼうと志す人々が、それをふさわしい形で学べるようにこの書が役立つとすれば、刊行にたずさわった人々の努力も報われると思う。

 二〇〇四年七月                                                             百瀬 文晃


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